クラウドとオンプレミスをほどよくミックス。「ハイブリッドクラウド」って何?

2021年9月28日

「ハイブリッドクラウド」の定義はさまざまです。AWS/Azure/Google Cloudのようなパブリッククラウド、自前でデータセンターなどに構築するプライベートクラウド、旧来の自社構内にあるオンプレミスシステムのうち、2つ以上の組み合わせと定義されることが多いようです。
本稿では、クラウド環境とオンプレミス環境を組み合わせたものをハイブリッドクラウドと定義します。

パブリッククラウドを利用する意義

やや自虐的なニュアンスも込めて、長らく「クラウド後進国」と呼ばれてきた日本ですが、パブリッククラウドの国内市場は最新の数字で少なくとも1兆円以上、調査内容の異なる別のデータでは1兆7265億円とされています。昨年はコロナ禍の初年度でもあり、オンサイト作業の不要なパブリッククラウドの導入や追加利用も増えたと思われ、前年比も概ね20%以上の伸長率となっています。

パブリッククラウドを利用するメリットについては、殊更に説明する必要もないかもしれませんが、サーバーやネットワーク機器、ストレージといったハードウェアの購入が必要なく、OS・ミドルウェアからアプリケーションまでがサービスとして提供されているため、調達・契約や導入作業の手間も省け、しかも使う分だけ支払う料金体系で、必要に応じてシステムの拡張や縮小が容易、というのが一般的な特徴です。
特に昨今、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が叫ばれる中、短期間で業務のデジタルシフトを実施する手段として、導入作業が短期で済むパブリッククラウドの利用が増加する傾向にあります。

コロナで注目された新たな利点

これらに加えて、コロナ禍においては、先にも述べた「オンサイトでの構築作業が不要」という新たな利点がクローズアップされたように思います。従来は客先にサーバーやネットワーク機器を設置していたような案件が、リモートワークでの構築・保守が可能なパブリッククラウド上への構築にシフトして行った例も、少なくなかったようです。

一方で、日本が「クラウド後進国」とされてきた期間が長かった理由、今なおパブリッククラウドの導入を躊躇する企業が少なくない事情としては、セキュリティ全般に対する懸念があろうかと思います。中でも、データを自社の構内でない場所に配置することへの抵抗感は、多くの企業において根強いものがあります。さらに、各パブリッククラウドにおいて、大規模なシステム障害がここ数年繰り返し発生したことも、一定程度影響しているかもしれません。

パブリッククラウドを利用する

パブリッククラウドの課題を解決する「ハイブリッドクラウド」

先進的なシステム管理者は、ここまでに挙げてきたようなパブリッククラウドの課題に早くから気づいていたようです。その解決策として提示されてきたのが「ハイブリッドクラウド」です。

ハイブリッドクラウドは、システム構成の一部をパブリック(公衆)の領域に置かず、自社の完全な責任範囲となるオンプレミスや、自社構築・自社専用のプライベートクラウドに置くものです。例えば、ユーザー登録や管理など、個人情報の取り扱いを伴うWebサービスをパブリッククラウド上に構築する場合、パブリック側にはユーザー向けの画面やサービスロジックだけを置き、個人情報はすべてオンプレミス、または自社専用のプライベートクラウドに配置・保存する、という構成があります。

ハイブリッドクラウドは、オンプレミスにあるシステムのクラウド以降の前段階、過渡期の消極的なシステムと理解されることもあるようですが、最近は最初からセキュリティの向上などを目的として、ハイブリッドクラウド構成を前提にシステム・サービスが設計される例も少なくないようです。

なお、ハイブリッドクラウドと類似の概念として「マルチクラウド」もあります。こちらは、複数のパブリッククラウドを組み合わせて使うことを指します。

パブリッククラウドといえば、AWSが半ば代名詞扱いを受けているような節があり、提供するサービスの量も質も圧倒的と言えますが、WindowsやActive DirectoryなどMicrosoft環境との親和性が高いのは、やはりAzureですし、Google CloudにはGoogleがパブリックなWebサービスを通じて磨き上げてきたAIなどの蓄積があったり、Kubernetesなど最新のコンテナ運用管理の発祥地であったりという、それぞれの特徴、得意分野があります。マルチクラウドの導入動機としては、現状はそうした適材適所での使い分けもありますが、大規模障害に備えたリスク分散という目的が多いようです。

ハイブリッドクラウドやマルチクラウドを上手に活用することで、セキュリティ上のリスクが低く、障害にも強いシステム構築が可能になるでしょう。

パブリッククラウドの課題を解決する

ハイブリッドクラウドの運用管理は、どうあるべきか

単一のパブリッククラウドを用いる場合、運用管理ツールもビルトインされたサービスとして提供されているのが一般的です。
AWSであれば「CloudWatch」というものがあります。オンプレミスの監視ツールと同等の監視ダッシュボードが構成でき、CPU・メモリ占有率、パブリッククラウド特有のクレジット(料金)などをモニターできるほか、アラート通知や障害復旧機能も搭載しています。

しかし、パブリッククラウドとオンプレミス/プライベートクラウドに跨るハイブリッドクラウドや、複数のパブリッククラウドを組み合わせるマルチクラウドにおいては、特定のパブリッククラウドに紐づくビルトインツールで、管理を賄うのは困難でしょう。ハイブリッドな環境では、やはり汎用の運用管理ツールが有用です。

POLESTAR Automationは、パブリッククラウドのインスタンスに対するクレデンシャル管理を搭載し、クラウドインスタンスもオンプレミスのサーバーと同様にエージェントやエージェントレスによる管理が可能で、ハイブリッドクラウド環境全体の一元管理に有用な運用自動化・構成管理ツールです。
ハイブリッドクラウドでも、ぜひともPOLESTAR Automationをお役立てください。

ハイブリッドクラウドの運用管理




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