あらゆるITがクラウドへ。クラウド万能時代にITインフラ運用はどうあるべきか?

2021年7月13日

世は「クラウド万能時代」といわれます。
従来、何かのシステムを立ち上げるには、サーバーやネットワーク機器をはじめとするハードウェア、OSやデータベースのようなソフトウェア一式を揃えなければならなかったのが、クラウドサービスの出現により、そのような初期投資に費用を掛けることなく、利用料金を払うことで構築可能となりました。

■クラウドが新しいクラウドを産む。クラウドのエコシステム

クラウドのメリットといえば、機器購入や開発のための初期投資が最小限で抑えられ、ランニングコストだけで運用できることが挙げられるでしょう。
最近では、自社で新しい技術を開発する代わりに、クラウドでサービスとして提供されているサービスを利用することも拡がっています。
クラウドが活用されている代表的な例に、AI(人工知能)があります。AIのエンジン部分、つまり、機械学習や深層学習(ディープラーニング)のロジック開発に新規参入しようとしても、既にAI開発で長い歴史と実績を誇る米IBMの「Watson」をはじめ、GAFAに代表される巨大IT企業が、日本円換算で何千億円とか何兆円といった莫大なコストを投じて行ってきた既存のAIエンジンに勝つのは難しいです。
エンジン開発以上に、AIが目論見通りに機能する上で重要なのは「学習」です。「ビッグデータ」という呼び名の通り、精度の高いAIを実現するには、AIに学習させるデータは多ければ多いほどよいです。
しかし、AIを用いたクラウドサービス、例えばチャットボットや音声認識のサービスは、数多くのベンチャーやスタートアップ企業からもリリースされています。中にはスクラッチ(無の状態)から自社開発されたものもありますが、多くはAIエンジンから開発したのではなく、先行企業がクラウドで提供しているエンジンやビッグデータを利用し、フロントエンドだけをオリジナルで開発して提供されているものが少なくないです。
そうしたサービスが提供される基盤となるサーバーやデータベースの構築にも、AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudといった、いわゆるパブリッククラウドのITインフラが主に用いられます。
毎日のように、新しいものがリリースされているクラウドサービス。その多くは、こうして既存の別のクラウドサービスを組み合わせて提供されているのです。クラウド上でクラウドどうしが結合し、新たなクラウドを産み出す、クラウドネイティブのエコシステム(生態系)が構築されたといえるでしょう。

クラウド

■世界に比べてまだまだ低い、日本のクラウド利用率

総務省の令和2年(2020年)版「情報通信白書」によれば、企業においてクラウドサービスを一部でも利用している企業の比率は64.7%となっており、前年の58.7%から6.0ポイント上昇しています。
この統計は、ITインフラを主体とするいわゆるパブリッククラウド(Iaas=Infrastructure as a Service)だけでなく、クラウドストレージサービスのようなファイル保管・共有系、電子メール、ビジネスチャット/コラボレーションツール、最近ではビデオ会議やデスクトップ仮想化(VDI)といった、あらゆるジャンルのクラウドサービスを合計した数字です。
新規で構築したシステムもあれば、かつて自前で構築する形(オンプレミス)で運用されていたものを、クラウドとして外部に出したものも含まれるでしょう。
こうした広義のクラウドサービスの利用率は、新しいBtoBサービスや古い既存サービスの置き換えの多くが、パッケージではなくクラウドで提供されていることもあって、伸び続けていくものと思われます。
しかし、サーバーやデータベース等のITインフラをクラウドに配置するIaaS(Infrastructure as a Service)だけで見ると、米国の大手市場調査会社であるガートナー社日本法人による最新の調査では、日本企業における利用率は、22%にとどまります。ガートナー社の別のデータでは、日本はクラウドへの支出額の伸長率からみて、クラウド普及が最低レベルの「抵抗国」であるとされてもいます。
世界的に見て高くないといわれる日本のクラウド利用率ですが、それでも社外向けのWebサイトや対外提供用のWebサービスなどは、ほとんどクラウドに置いて行く流れになっているようです。
クラウドに置かれないのは社内システムで、日本での利用が進まない理由として挙げられるのは、主にセキュリティ面での理由、つまり個人情報のようなセンシティブなデータはできるだけ社内に置いておきたい、というものですが、その結果、必ずしもオンプレミスに置いておく必要のないものまでオンプレミスに残り続けている、ということになっているように思います。

利用率

■クラウド時代のITインフラ運用は?

それでも、サーバーのハードウェアやOS、ミドルウェアなどが数年で陳腐化するリスク、人件費を含む保守の負担、災害対策などのBCP(事業継続計画)を理由に、ITインフラの大きな流れとしては、日本でもクラウド化に向かっているのは確実と思われます。
ITインフラをクラウドに置く、というのは、自社内や自社で借りているデータセンターのオンプレミス環境にあった既存システムを、クラウド環境に移行したり、クラウド上に新規に構築することです。
しかし、システムの動作する環境、つまりハードウェア、OS、ミドルウェアは、実はオンプレミスもクラウドも大差ありません。
オンプレミスのサーバーと同様、クラウドにもIntel系プロセッサで動作するサーバーインスタンス(最近はArmプロセッサのインスタンスも出てきているようですが)が構築でき、適切なスペックのプロセッサやメモリ、ストレージを選択・確保してインスタンスを作成し、オンプレミスと同じOSとミドルウェア、アプリケーションをインストールします。
それぞれのインスタンスは「VPC」などの名称で呼ばれる仮想LAN上に置かれ、同一の仮想LAN上にあるインスタンスどうしはプライベートIPで接続させることも可能です。
つまり、死活・性能監視や構成管理、OS・ミドルウェア・アプリケーション等のアップデート、監査、レポーティングなど、ITインフラ運用で行うべきタスクは、オンプレミスでもクラウドでも大差ないのです。

インフラ

■オンプレミスの運用自動化資産を、クラウドにも活かす

オンプレミスからパブリッククラウドへの移行で何か変わるとすれば、インスタンスの利用時間やトラフィックで課金されるというクラウドのビジネスモデルに加え、ハードウェアをクラウドベンダーが提供・保守してくれるので、いわゆる「ハード的故障」から、実質的に解放されることでしょうか。
しかし、ハードウェア以外のリスクは、オンプレミス同様にユーザー自らが管理して行かなければなりません。ITインフラの運用管理には、オンプレミスで実績のあるツールが、クラウドでも役立つといえるでしょう。

ITインフラ運用自動化ソリューション「POLESTAR Automation」は、オンプレミスはもちろん、クラウドでも威力を発揮する、構成管理と点検・監査のためのGUI型ツールです。
「ジョブ」という概念で提供される運用管理タスクは、クラウド環境でもそのまま実行でき、役立つものばかりです。
オンプレミスのサーバーと同様、エージェント方式でインスタンスを運用管理できるほか、公開鍵の集中管理機能も搭載し、鍵認証が一般的なクラウドでも、エージェントレス方式による運用自動化を安全に実現します。
オンプレミスでも、クラウドでも。ITインフラ運用にはPOLESTAR Automationをお役立てください。