新サービス「Widefone」と運用自動化・構成管理

2022年8月16日

ワイドテック プロダクト企画のYです。

本コラムで予告(「「XaaS」はどこまで自動化できるか」2022年2月15日公開・「弊社草創期からの事業「電話」について」2022年3月15日公開)してきた、弊社の電話関連新プロジェクト「Project C」が、この8月1日から「Widefone(ワイドフォン)」の名で、先行サービスを開始しました。

実はこのプロジェクトについては、3月15日公開の社内報のような(!)コラムの脱稿直後に大きな方針転換があり、スケジュールやサービス内容も大幅に変更されました。以来、社内唯ひとりの企画職としてのいくつもの定例・臨時会議参席と本コラムの執筆を除き、ほとんどWidefoneのサービス立ち上げに稼働を割いている状況で、これから来年の春ぐらいまでの行動予定が、ほぼ埋まってしまっています。

映画も6月初めにトム・クルーズ主演の大ヒット作「トップガン マーヴェリック」(もう2か月以上やっていますが、今もかなりのお客さんが入っていますね。やっているうちに特殊上映でもう一度見たい)を見に行って以来、一度も行けていません。別に、劇場に行く時間が作れなかったわけじゃないんですけどね…


■IP通信技術を用いた音声サービス「Widefone」

WidefoneはVoIP(Voice over Internet Protocol)、つまりIP通信技術を用いた音声サービスです。
PBX(構内電話交換機)をIP化・クラウド化した「クラウドPBX」を基盤とし、「050」で始まる電話番号で提供される外線通話可能なIP電話と、社内の範囲(テレワーク中でも可)でのみ通話できる内線通話の提供を基本に、さまざまなコミュニケーションサービスを展開して行こうというプラットフォームで、1つではなく、内容の異なる複数のサービスをリリースする計画です。

8月1日からWidefone初のサービスとして先行提供を開始したのは、最もベーシックな音声専用サービス商品「Widefone CV(CVはCloud Voiceの略)」で、「1ユーザーにつき1つの外線(050電話番号)、1つの内線」「初期費用も月額基本料も900円(税別)」という、シンプルさとわかりやすさにこだわっています。

会社で加入し、私用のスマホに入れていただくと、私用番号とWidefoneの社用番号の使い分けができ、社用番号の請求は会社に回せ、Widefoneどうしの通話も無料になります。


■Project CからWidefoneへ

…と、Widefoneのご紹介はここまでにしておきますが、Widefoneとネーミングされる前の当初のProject Cは、サービス基盤からクライアントアプリまで完全自社開発とし、電話をはじめ、ビデオ会議(Web会議)やチャットを含む多彩なコミュニケーション機能を、単一の基盤で提供する「UCaaS(Unified Communication as a Service)」を最初にローンチする予定にしていました。
3月前半までの時点では、まずは夏から秋にかけ、このUCaaSだけの単体でサービスを立ち上げ、応用・派生サービスは来年以降に考えよう、ということになっていたのです。

しかし、新サービスはもちろん、弊社の既存電話系SaaSでも利用中の「050」IP電話番号について、番号の仕入れ方法を変更することになり、番号仕入れ用のシステム開発が割り込んできたのです。その結果、Widefoneに先立つ形で「IP電話サービス[050]」という名のIP電話番号バルク販売事業も6月から始めたのですが、UCaaSのままサービスを早期提供するのは難しくなってしまいました。

そこで、本来は来年以降、UCaaSが取りこぼしそうな普通の音声通話・スマートフォン内線化のニーズを補完する派生商品として構想していた音声専用の多機能IP電話サービスを、UCaaSに先行して提供しようという話になりました。

それが、Widefone第1弾のWidefone CVというわけです。アプリは京都にあるIP電話アプリの老舗・ageet(アギート)さんから提供していただくことにし、まずはサービス基盤(つまりインフラ側だけ)の先行・集中開発に励みました。


Project CからWidefoneへ

Widefoneリーフレットより
左の電話アプリ画像がWidefone CVで採用したageet社の「AGEphone Cloud」



■Zabbix+POLESTAR=監視~運用自動化のワンストップソリューション

Widefoneのサービス基盤であるクラウドPBXは、機能面だけでなくコスト面でもいろいろな工夫を凝らすことで、質の良いサービスを手頃な価格で提供することを目指したのですが、中でも省力化運用、つまり最低限の人数での運用を主要テーマのひとつに掲げ、特に注力しました。
その一環が、Zabbix+POLESTAR Automationという、弊社の誇る監視~運用自動化のワンストップソリューションの採用です。

Widefoneのサーバー構成については2月の本コラムでも触れましたが、データベースを含むすべてのサーバーがクラウド上のインスタンスにあり、大半はAWSなのですが、一部は国内ベンダーのクラウドにあります。このマルチベンダー構成での運用管理には、特定クラウドに紐づくビルトイン型の監視・自動化サービスではなく、ニュートラルでインディペンデントな立場の運用ソリューションが求められます。

ZabbixとPOLESTAR Automationを用いることで、現状のWidefoneインフラの運用はもちろん、ユーザー増加に伴う追加の構築・拡張、点検や障害対応なども滞りなく、極力簡単に実施でき、しかも、作業が属人化してしまわないよう、標準化した運用設計が可能になりました。


■自社サービスの運用は、自社ソリューションで

…と、いかにも最初から、理路整然と運用の標準化に取り組んできたかのように書いていますが、実際には試行錯誤の連続でした。
Widefoneの開発はアジャイル方式なので、それ自体が試行錯誤です。しかも、少数精鋭のメンバーでやっていて、運用管理にまで手が回らないのが現状です。開発と運用の一体化、つまりDevOpsにも挑戦したかったのですが、開発メンバーには開発だけに専念してもらわないと、スケジュールが破綻してしまいます。

そこで、クラウドインスタンスの構築をはじめとするインフラの整備は、実は開発メンバーではなく自分がやっているのですが、サーバーの構成も何度も変わり、ある程度地歩が固まったのは、Widefone CVリリース直前のことです。

そこまでは運用設計に手を付けることはできず、ようやくサービスが始まろうというところでZabbixやPOLESTAR Automationの準備に掛かったのが、実際の話です。


■「手動構成管理」からの脱却をPOLESTARで。実際に体感

ともあれ、POLESTAR AutomationとZabbixが自社取扱製品にあって、本当によかったと思っています。プロジェクトの立ち上げの頃から構築を手掛けつつ、Excelファイルでインスタンス構成表などを作って管理していたのですが、本番・テスト環境を合わせてまだ10数個しかないインスタンスの管理も、他の仕事をやりながらですと、特に立ち上げた後の更新作業が疎かになりがちでした。 これは正に、このコラムや他のPOLESTARチームメンバーが執筆している事例・ホワイトペーパーなどで再三触れている、POLESTAR Automationで改善・代替すべき「手動構成管理」そのものといえます。正直、字義通りの「トイル(toil=労苦)」すらも感じました。

「ひとり情シス」の皆様のお気持ちが、身を持って理解できた気がします。
POLESTAR Automationを入れてしまえば、構成管理はツールに任せてしまえるようになります。そこも、実務として体験できました。

なお、ZabbixやPOLESTAR Automationのインストール、ダッシュボードを含む必要な設定作業は、自分も片足を突っ込む形でPOLESTARチームが担当しました。 本番運用は、社内の別の部署が担うことになっています。
つまり、Widefoneは社内のさまざまな部署やチームが、組織横断型で総力を挙げて取り組むサービスというわけです。


弊社エントランスのWidefone大型ポスター

弊社エントランスのWidefone大型ポスター
これを思いついて貼ろうと言ったのは、もちろん社長です


■Widefone、ご期待ください

Widefone立ち上げとZabbix+POLESTAR Automationを用いた運用事例については、もう少し実運用を経験したところで、ここPOLESTARサイトに手前味噌な自社事例として書かせていただくつもりです。

ところで、実はWidefone CVの製品化やサービス基盤開発・構築を準備する間、自分の社会人経験でも前例がないほど、多くの皆様からのヒアリングの機会をいただいていました。貿易商社の営業職だった、新卒の数年間を上回る密度です。今も時間の許す限り、外出を含めてできるだけ直接、お客様に会うように心掛けています。

その結果、新サービスのアイディアの数が(オプション的なものを除いた、単体で成立するサービスだけでも)とんでもないことになっています。個人的に非常に面白く、世の中がちょっと変わるかも、と思っているものもあります。全部出せるかはわかりませんし、再来年以降になってしまうものもあるかもしれませんが、できるだけ世に送り出したいと考えています。

なお、本稿執筆時点では暫定コンテンツとなっているWidefoneのサイトは、正式公開に向けて準備中ですが、そこでも自分のコラム(社内通称「Yコラム」)を連載することになっていますので、機会がありましたら、どうかそちらもご覧いただければ幸いです。

そして、できればワイドテック渾身の新サービス、Widefoneの方にも興味を持っていただければ、とも思っています。