弊社草創期からの事業「電話」について
ワイドテック プロダクト企画のYです。
弊社では、入社日から1周年、2周年…と年次を重ねるたびに、「○月○日で、勤続○年です。」というお祝い?のメールが該当の社員に送られてくるのですが、自分はこの3月1日で、9年目となりました。
これまで最も長く勤めた会社は、6年に届かないところでの退職でしたので、9年もいるというのは、もちろん最長記録です。
その会社は、秋葉原からギリギリ徒歩圏にあった、主にコンシューマー向けのパソコン周辺機器を扱う中小企業で、自分はその会社で製品企画を手掛けていました。ワイドテックが設立された2000年12月25日は、台湾の協力会社に出張中でした。
■はじまりは「TOGOS」と「AUTOWARP」から
20世紀もあと6日を残す中で設立された弊社の、立ち上げのきっかけとなったのは、某大手通信会社向けに開発したNMS(ネットワーク管理/監視システム)スーパーバイザーシステム「TOGOS」でした。創業者でもある現社長が、以前から同社に提案していたTOGOSのアイディアを具現化するために興したのが、ワイドテックなのです。
TOGOSはその通信会社で、今もバージョンアップを繰り返しながら稼働を続けていて、TOGOS運用のために20年以上にわたり、常駐者も送り出しています。POLESTAR AutomationやZabbixを含む一連の運用関連製品や、SES/人材サービス事業などの起源は、すべてこのTOGOSにあるといえます。
一方、現在のワイドテックにおいて、対外的、客観的に最も存在感のある事業というと「電話」、主に固定電話を応用した製品やサービスでしょう。
最初の製品である電話転送切替システム「AUTOWARP」は、弊社の現社長が、ある会社で事務の女性社員が1人で、固定電話から携帯電話への転送となる電話番号の切り替え作業を、1日中手作業で行っていたのを見たのがきっかけとなって開発されたものです。
NTT東西の「ボイスワープ」をはじめ、各電話会社の電話転送サービス(以下「ボイスワープ等」と総称)では、転送先の電話番号の入力や切り替えを、電話機のプッシュボタンを操作して行う必要があります。
しかし、毎回の手作業では、切り替え忘れや電話番号の設定ミスが多発していたことから、番号切り替え作業を自動化し、ミスなく転送先を切り替えられるシステムの開発を思い付いたのです。
現在も金融業や全国展開の外食チェーンなど、数百~数千回線の定期的かつ大量切り替えを伴う大型案件で活用されるAUTOWARPが世に出たのは、2007年のことです。
■オンプレミスからクラウドへ~「転送録」の誕生
AUTOWARPは、プッシュ式電話のトーンダイヤルで行うボイスワープ等での切り替え操作を、ソフトウェア制御によりトーンを発生させる機器(回線制御装置)によりシミュレートすることで実現し、併せてスケジュール機能の提供により自動化を図っています。
しかし、このシステムは必要な各機器をオンプレミスで提供しているため、数百回線以上の規模がないと、収支が合いません。1回線から数十回線程度までの切り替え需要に応えるには、コストが高すぎるのです。
そこで、当時隆盛を迎えつつあったクラウド、当時はまだ「ASP(Application Service Provider)」から「SaaS(Software as a Service)」へと呼称が変わりつつあった頃ですが、回線制御装置を共用化し、回線1本単位から安く利用できるAUTOWARPのクラウド版を開発しようということで構想されたのが「転送録」で、正式サービスは2010年から提供されています。
転送録を提供するにあたっては、AUTOWARPをクラウド化した「電話転送切替」だけではサービスラインナップが弱いこともあり、AUTOWARPとは異なる技術を用いた、さまざまなサービスも新規に開発しました。代表番号に着信した電話を、社員の携帯電話などに次々と転送する「順次転送」、登録された全員を呼び出して最初に取った相手と通話が成立する「一斉呼出転送」などがそれです。
現在では名実ともにワイドテックの顔となり、今なお毎年成長を続けています。
■予想を超えて、広範に活用される「急コール」
転送録からは、新しいサービスも派生しました。メールの受信をトリガーに、順次転送の仕組みを応用して電話を発信し、メールを受信したことを関係者に順々に電話を掛けて知らせるのが、過去に何度も本コラムで言及しているメール連携電話発信サービス「急コール」となります。
当初は単体のサービスではなく、サーバー監視を行っている取引先企業からの依頼で開発したものです。単にメール受信に反応するだけだと、重要度(深刻度)の低いメールやいわゆるスパムメールなどを受信しても電話を掛けてしまうので、送信者や件名、本文などで絞り込めるフィルター機能を開発して追加し、汎用性のあるSaaSとして展開できるようになりました。
システム運用の現場で、メール通知機能を持つ死活監視/パフォーマンス監視製品(例えばZabbix)との連携を想定して開発・汎用化したサービスですが、「重要なメール受信に確実に気付くようにしたい」というあらゆるニーズに応えられるサービスとして、昨年は一昨年比で約250%もの成長を遂げました。
例えば機械のメンテナンス、物流の温度アラート、IoTと連動した畜牛の健康管理、物流倉庫での温度管理、はては不動産や中古車買い取り店の営業メール対応など、開発当時は思いも寄らなかった用途へと、次々に展開されています。
■そして「電話」の未来へ
前回のコラムで、現在弊社で開発中の新しいXaaS「Project C」についてご紹介しました。
実は、これも電話に関係するプロジェクトです。
自分は入社以来9年間、ワイドテックの花形部門である電話応用サービスの企画には、ほとんど関わってきませんでした(唯一の例外が「急コール」という命名)。入社当時、AUTOWARPはいくつもの大型案件を獲得し、転送録もサービス開始3年を経て、成長軌道に乗った頃でした。
電話以外で新しいジャンルのプロダクトやサービスを開拓するのが自分に課せられたミッションであり、POLESTAR Automationはそのひとつでした。
しかし、創業から20年を迎えた一昨年の末あたりから、弊社の原点のひとつである電話事業で、新しいサービスを作ってみよう、ということになりました。
電話やその応用技術の基礎的な勉強から始め、企画に約1年を掛け、ようやく概要が固まり、今年から開発フェーズへと移行しています。
AUTOWARP、転送録、急コールの基礎やノウハウがあってこそのProject Cではあるのですが、入社から8年間にわたって電話系サービスには一切関わってこなかったところからのまっさらなサービスとして、過去の因習に縛られないものをと考えています。
POLESTAR Automationを発表したのは、創業以来江東区亀戸にあった弊社の本社事務所が、千代田区岩本町の現在地への移転を控えていた直前の、2016年10月でした。
岩本町への移転は当月の末に実施されましたが、移転作業のために古い書類やハードウェアを整理していたところ、ちょうどワイドテック創業直後の時期に、自分が冒頭の6年近く勤めたかつての勤務先で手掛けていた製品が倉庫の奥から出てきて、不思議な縁を感じてしまいました。
それから約5年半。これまで岩本町の現在地で、ビル4階の半分を使用してきた弊社でしたが、5月の連休明けからは全フロアを使用することになり、今週末から段階的に、新たに拡張された区域への座席の移動が開始となります。
と、いうわけで、今回はオフィス拡張という節目に弊社の歴史を振り返る、まるで社内報のような記事になってしまいました。
ITインフラ運用管理の話は何も出ない回で大変恐縮ですが、この機会に少しでも、ワイドテックという会社そのものにも、興味を持っていただければ幸いです。