どうする? CentOS Linux後継問題

2021年8月24日

ワイドテック プロダクト企画のYです。

まずは久々の映画ネタですが、皆様は夏の大作アニメーション「竜とそばかすの姫」(細田守監督)はご覧になられたでしょうか?
高知県の限界集落に住む地味な女子高生「すず」が、インターネット上に作られた、全世界で50億人以上が集う仮想世界「U」のスター「ベル」となって世界的な人気者になるのですが、そこに「竜」の姿をした、皆から恐れられる謎の存在が現れ…という話です。
細田監督といえば、やはりインターネット上の仮想世界をテーマとした「サマーウォーズ」もヒットさせ、今でも名作アニメとして、何度もテレビで放映されています。あれに負けず劣らず、面白い作品だと思います。Uの中でベル=すずが歌うシーンが、とにかく圧巻ですね。あれは劇場の大きなスクリーンで見てこそのものでしょう。
本稿執筆中に、興行収入50億円を突破したというニュースも流れました。IT業界の方なら、ネット上の仮想世界という設定にも、違和感なく馴染めることでしょう。まだの方はぜひ。

■Linuxといえば「CentOS」、でしたが…

さて、いつものノリならスクリーンの向こうの「仮想世界」からOSの「仮想化」の話題に持って行くところですが、仮想化については前回も触れましたし、前回と前々回はWindowsの話題がメインでしたので、今回はLinux OSのお話です。

Linuxにはさまざまなディストリビューション(略してディストロとかディストリとも)がありますが、中でも国内の企業において社内ユースで人気が高いのは「CentOS(セントオーエス)」だと思います。海外ではLinuxのメジャーディストロでもう一方の雄「Ubuntu(ウブントゥ、ウブンツ)」も広く使われているようですが、日本ではどこに行ってもCentOSばかりのような印象で、弊社でもそうです。
周知の通り、CentOSは商用Linuxディストロの代表格、「RHEL(レルと呼ばれることが多いようです)」ことRed Hat Enterprise Linuxの「クローン」です。RHELのソースコードからRed Hat社の名称や著作権表記など、プロプライエタリ(権利の及ぶ部分)要素を削除してビルド(コンパイル)したものですので、ほぼ商用RHELと同一のOSということができます。セキュリティパッチなどの提供期間も長く、現在主流と思われるCentOS 7も、2024年4月30日まではサポートが継続されます。
もちろん、完全無料のOSなので、コミュニティを除くテクニカルサポートはありませんが、特に国内にはCentOSを常用しているユーザーが多いので、何かトラブルに遭遇しても、大抵のことは日本語によるネット検索で解決できます。

■え? CentOSってなくなるの?

そんな有り難い存在のCentOSですが、昨年の暮れも差し迫る2020年12月8日、衝撃的なニュースが世界を駆け巡りました。CentOSの開発を手掛けるコミュニティCentOS Projectが、RHEL現行バージョンクローンとしてのCentOS開発・サポートを2021年12月31日をもって停止し、開発を2019年9月に発表されたRHELのアップストリーム(先行開発)ブランチである「CentOS Stream」に絞ると発表したのです。
従来(現行バージョンの8まで)のCentOSは、RHELのリビルドでしたので、リリースやパッチの配布は、本家RHELより若干タイミングが遅れて行われていました。それがCentOS Streamでは関係が逆転し、RHELに常に先行する形となります。
しかも、バージョン更新方式も従来とは異なる「ローリングリリースモデル」で、8.1, 8.2, 8.3…のような小数点以下のマイナーバージョンはなくなり、同じメジャーバージョン(現行は8ですが既に9の開発も始まっている模様)の中で、そのメジャーバージョンのサポートが終了するまで、新しいコードが随時リリースされて行くことになります。
RHELやCentOSのさらに先行リリース的な位置づけとして、「Fedora(フェドラ)」というディストロがありますが、新しいCentOS Streamは、FedoraとRHELの中間に位置づけられるリリースというわけです。

Fedora, CentOS Stream, RHEL リリースの流れ
図:Fedora, CentOS Stream, RHEL リリースの流れ
Diagram licensed CC-SA: https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0/


CentOSが人気を集めたのは、バージョンアップの間隔やコードの品質・安定性が、商用版のRHELと基本的にほぼ同一であることと、サポート期間の長さからでした。しかし、CentOS StreamはRHELの先行かつローリングリリースになることから、長期でバージョンを固定しての運用は、もはや困難です。

■CentOS 7からの移行先、何がいい?

そこで、従来版CentOSの開発中止発表から間を置かずして、従来からのCentOSと同様なRHELクローンとしてのOSSを求めるユーザーを対象に、CentOSに代わる新しいディストロを立ち上げるコミュニティがいくつか出てきています。
今のところ、有力と思われるのは、CentOS Projectの創始者が立ち上げた「Rocky Linux」と、主にホスティングサービスに特化したディストロを提供してきたCloudLinux社の支援による「AlmaLinux」の2つでしょう。

AlmaLinuxとRocky Linuxの公式サイト
AlmaLinuxとRocky Linuxの公式サイト
図:AlmaLinuxとRocky Linuxの公式サイト。
いずれも2021年8月23日時点で日本語対応(前者は機械翻訳調ですが…)


いずれのディストロも、RHELのクローンとしてローリング型ではない通常のマイナーバージョン型でリリースされることを謳い、最初のリリースとなるRHEL 8相当バージョンのサポート提供も、本家と同様の2029年までと宣言しています。
どちらが普及・定着するかは、現時点では何とも言えませんが、2024年に迎えるCentOS 7のサポート終了までには白黒が付いているかもしれませんし、案外、両方が併存しているのかもしれません。
CentOS 7までと同様の、バージョンを長期間固定しての運用を望むなら、これらの後継ディストロから選ぶことになりそうです。
一方、テスト用途が主で、現在CentOS 8を利用中の方なら、いっそCentOS Streamに移行してしまうのもありかもしれません。アップデートで常に最新のソースが降ってきますし、いずれはRHELの本番に適用されるソースということで、先を睨んだ開発テスト環境などには、むしろ適しているかもしれません。

■OS移行後の環境構築も、POLESTAR Automationで

さて、新しいOSの環境構築では、やること、入れるものは大体決まっているかと思いますが、定型的な環境のセットアップにも、POLESTAR Automationが便利です。
POLESTAR Automationのスクリプトジョブを用いると、各種の環境設定や必要なミドルウェア、アプリケーション等のインストール、yum/dnfでインストールされないパッケージやConfigファイル等の配布、そしてインストール後の動作確認まで、自動化することができます。


POLESTAR Automationのスクリプトジョブ
図:POLESTAR Automationのスクリプトジョブ。
POLESTARチームのエンジニアが作ったものが、もう511件にもなったとは(各OS対応用の合計です)


と、いうわけで、まずは評価版でお試しを!




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